第47回日本骨・関節感染症学会
会長挨拶
第47回日本骨・関節感染症学会
会長 内尾 祐司

島根大学医学部整形外科学教室
 このたび、歴史と伝統ある第47回日本骨・関節感染症学会を島根大学医学部整形外科学教室が担当させて頂きますこと、大変光栄に存じます。本学会を2024年7月26日および27日の両日に、島根県出雲市にありますビッグハート出雲にて開催致します。何卒よろしくお願い申し上げます。
 感染症は有史以前から、人類の疾病の重要な位置を占め、その克服は今なお、医学・医療の喫緊の課題です。2019年12月、武漢で確認された新型コロナウイルス感染症では、瞬く間に全世界に蔓延し、2023年5月7日まででは、日本における感染者数は3380万人、死亡者数は74.6万人に達しました。変異株に対応するための数回のワクチン接種による集団免疫の確立と予防によって感染者数は次第に減少し、2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の位置づけは、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に移行しました。しかし、局所的なクラスターの出現が今なお報告されており、本感染症が完全に征圧されたとは言い難い状況にあります。
 日本骨・関節感染症学会は、骨・関節領域の感染症に関する成因、病態、治療法および予防法について基礎的、臨床的研究の進歩発展を図ると共に、会員に最新の情報を提供することにより、研究成果を日常診療に役立てることを理念として、1978年(昭和53年)に日本骨・関節感染症研究会(第1回)が発足し、2006年(平成18年)からは日本骨・関節感染症学会(第29回)として、感染症の克服に向けて様々な領域の新たな整形外科学・医療の進歩・発展がなされてきました。
 整形外科領域における感染症においても今なお様々な課題が残されています。第47回となる本会では、日本の骨・関節領域の感染症に関する成因、病態、治療法および予防法についてさらなる進歩と発展を期して、“難治性骨関節感染症への挑戦-Be a Game Changer!-”をテーマとして掲げました。
 特別講演には、浦野 健先生(島根大学新興感染症ワクチン・治療用抗体研究開発センター教授)をお招きし、浦野先生が開発された新規モノクローナル抗体による難治性感染症の克服の未来を熱く語って頂きます。また、シンポジウムでは、基礎、人工関節周囲感染、脊椎領域、持続局所抗菌薬灌流(CLAP)療法の各領域について、それぞれの第一人者に講演をしていただいた後、シンポジストとともに現状と課題、そして展望を討論していただきます。本学会の多くの先達のご尽力によって、今日の日本の骨・関節感染症学およびその医療が発展してきました。今後さらなる発展を期するためにも、どうか皆様方のご参加と活発なご討論をいただきますようお願い申し上げます。
 さて、出雲は、神代から医学・医療に縁の深い土地です。古事記では「大國主神(おおくにぬしのかみ)」が稻羽之素菟(いなばのしろうさぎ)を真水による洗滌と蒲(がま)の穂でくるむで救う神語りや、日本書紀、出雲国風土記にあるように、病気の治療法を定めた故事などから、“医学の祖神”とされています。また、八十神の謀によって大國主神(おおくにぬしのおおかみ)が大火傷(おおやけど)で焼死したのを、「𧏛貝比売(きさかひひめ)」・「蛤貝比売(うむがひひめ)」が母(おも)の乳汁(ちしる)を塗って蘇生させたことから、両神は医薬・看護の神様とされます。大國主大神(おおくにぬしのおおかみ)と𧏛貝比売(きさかいひめ)および蛤貝比売(うむがいひめ)の三神は、国宝・出雲大社(いずもおおやしろ)の御祭神として、今なお多くの人々の信仰を集めています。さらに、八百万の神々が来雲される神在月は出雲では宴会や大声は禁止とされ、本来「忌み月」として過ごさなければなりません。これは崇神天皇時代から行われてきた手水(ちょうず)・禊ぎ(みそぎ)とともに、疫病予防の知恵ともいえる風習です。
 どうか一生に一度で宜しいのでそのような出雲にぜひおいでください。皆様のご来訪を心よりお待ち申し上げております。学会の合間には、海の幸・山の幸も豊富な山陰の味覚を満喫しながら、日頃の疲れを癒して頂きたいと思います。どうか、多くの皆様のご参加と活発なご討論によって難治性骨・関節感染症の克服にお力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
主催事務局
島根大学医学部整形外科学教室
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