第64回近畿理学療法学術大会 in奈良
大会長 増田 崇
地方独立行政法人 奈良県立病院機構 奈良県総合医療センター |
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2025年2月23日奈良県コンベンションセンターにおいて第64回近畿理学療法学術大会を開催することとなりました。
前回の奈良県開催は2019年1月であり、ちょうどその年の12月からCOVID-19が発生し、長い感染症との戦いの日々が始まりました。それから6年ぶりの開催となりますが、その間に世間は大きく変化し、学会のLIVE配信やオンデマンドが通常の技術となりました。
本学会も対面とLIVE配信のハイブリッド開催としており、一部講演はオンデマンド配信を予定しております。情報発信ツールが多様化したことでより多くの皆様が手軽に参加できる環境となった反面、対面での交流の大切さも再認識されつつあると感じています。対面の参加者を1000人程度に制限した中での開催となりますが、活発な交流をしていただけることを期待しています。
さて、本学会ではテーマを「ナラティブと理学療法」としました。ナラティブとは英語で「物語」を意味し、しばしばエビデンスと対比させて語られることがあります。エビデンスに基づく医療をEBM(evidence based medicine)ナラティブに基づく医療をNBM(narrative based medicine)と略されています。EBMの概念は1991年頃から、NBMは1998年頃から提唱された比較的新しい概念になります。しばしば対比して語られるこれらの概念ですが、我々理学療法士は従前からEBMの中にナラティブな視点を取り入れていたように思っています。エビデンスとは元々、疫学的なデータを指すことであり最大公約数的な指針を示すことができますが、それだけではすべてが決められず、患者や環境に起因する様々な因子を踏まえて治療方針を決定する必要があると考えています。その因子の1つにナラティブも含まれています。しかしながら、多くのエビデンスや診療ガイドラインが整備されてくる中で、いつしか医療者中心の治療方針の立て方になっている場面が増えているように感じます。確かに質の高い根拠(エビデンス)やガイドラインは有用ではありますが、それを重視するあまり患者不在となっている場面はないでしょうか。本学会ではNBMをテーマとすることで今一度、患者目線で治療をすることの大切さを認識し、患者さんにとってより質の高い治療を提供するための一助となる事を期待します。
寒い時期の開催となりますが、皆様にとって有意義な学術大会となりますよう、奈良県理学療法士協会の会員一同しっかりと準備を重ねたいと思います。状況の許す方は是非、現地で参加していただき大会を盛り上げていただけますよう、お願い申し上げます。